暗号は解読された　般若心経【要約】

　仏陀が説いた般若波羅密多の教え

　観音様は般若波羅密多の深い瞑想をされたときに、世界には《宇宙の理念》が厳然と存在していて、人間が生きる現象の世界は《宇宙の理念が表現された状態》であり、一切が肯定されている、と見定められた。

　観音様は、この宇宙の姿を皆空と呼称し、この見定めに基づいて、衆生救済の方法を以下のように示されたのである。

　般若波羅密多とは新しい宇宙観に基づき、新しい「宇宙と人間の関係」を説いた呪文であり、これは真言である。しかし当時にしては、あまりに革命的な内容であったため、暗号として記述し、未来において解読されることを計画したのである。

　さらに仏教としての継続性を保ちつつ、新しい宇宙観を説く必要性から、新しい概念を持つ語句を導入するかわりに、初期仏教で遣われた語句を再定義し、新しい概念に対応させたのである。

　色、受想行識、諸法は、新しい宇宙観を示すために、新たに再定義した語句である。そしてこの語句が呪文をひもとく、即ち暗号を解読する「カギ」となっているのである。

　先ず般若波羅密多の真言を暗号解読した結果の形で以下に示す。

　舎利子よ。人間の精神性の本質部分は、色であり、それは《宇宙の理念》そのものである。

　《宇宙の理念》は空と呼ばれ、実在であり、存在の本質である。それは《宇宙の理念》であると同時に多層次元宇宙の『超実体』であり、宇宙の本質的存在である。そして空は色そのものである。

　色は般若波羅密多に帰依することでいつでも空に帰還できるし、そして色はその役割を果たすために、空から、『事象』の世界に降りてきて受想行識を支える。

　受想行識は色の主導の下に、色と共に肉体を一時の住処とし、『現象世界』で生きる存在であり、現実世界で活動する役割を持ち、色と対になっているもう一つの精神性である。

　受想行識も色とまったく同様に、『超実体』の空そのものであり、般若波羅密多に帰依することで空に帰還し、再び空から『現象世界』に戻って活動することが出来る。

　人間とは、色と受想行識の共同作業で空から降りてきて、空の中から《宇宙の理念》を展開するのである。それが宇宙の生命活動である。

　舎利子よ。ここで諸法とは、人間が生きる環境のことであり、諸法は『事象』を完全に管理しているのだ。

　諸法は空が自らを具体化した空相である。人間はこの諸法に環境の一切を支えられ、守られて生きているのである。

　諸法は空相であり空を投影した実在であるから、「不生不滅」として、生と滅を超越し、時間を超越し、永遠に存在し続けている。次に諸法は「不垢不淨」として、垢と淨を超越し、善と悪の対立から成る相対価値を超越した絶対普遍性を有している。さらに諸法は「不増不減」として、諸行無常の『事象』の世界を超越し、その背後にあって管理している時間・空間と物質を含むエネルギーである。

　それ故に空と空相から成る空中には、初期仏教が説くような人間も世界も存在しない。即ち空と空相から成る空中には、初期仏教が説く［色・受想行識・眼耳鼻舌身意・色声香味触法・眼界から意識界まで］無い。

　空と空相は初期仏教で説かれた世界の中には存在せず、空と空相はこれらの旧世界の外側に存在している全く新しい概念の宇宙である。

　新しい宇宙観であるが故に、初期仏教の十二縁起、四諦等の旧経典を完全否定する。これら初期仏教で遣われた人間と世界を分析した旧語句と旧経典は全て否定されるべきものであり、悟りには全く必要がない。

　ここまでが解読された般若波羅密多を表す真言である。

　ここで否定された旧経典には悟りのために「何ら得る所は無い」という理由で以下を説く。

　地上に生きる修行者は、これら旧経典を破棄して般若波羅密多に帰依したが故に、心に障りが無くなり、障りが無くなったが故に、恐怖が無くなった。そしてさらに初期仏教において「実体が無い空」とする、天地がひっくり返った、根本的に間違った空の認識を一切捨てて、涅槃という悟りに達することが出来た。

　そして天上の修行者、即ち過去現在未来に同時に生きる三世諸仏は、般若波羅密多に帰依したが故に、阿耨多羅三藐三菩提という完全なる悟りを得ることが出来た。

　故に般若波羅密多の真言を表した呪文は未来に解読されるまでは意味が不明であるが、大きな霊力のある真言であると知るべし。

　偉大な明知の真言であると知るべし。

　この上ない真言であると知るべし。

　比類の無い真言であると知るべし。

　そしてこの真言を唱えることで、一切の苦を取り除く力が発揮されるのである。

　般若心経の編纂の段階で、般若波羅密多の真言を暗号化したために、しばらくは意味不明であるが、未来となる現在に、予定通りに暗号は解読されたのである。

　いずれ解読されることになる般若波羅密多の真言はこのままで真実なのであり、このままで決して空虚ではないのだ。

　それ故にいずれ明らかになる般若波羅密多の真言の結論的意味を要約して、分かりやすく短い形で、「般若波羅密多呪」としてここに示しておく。

　即ちここにその要約の呪文を説いて曰く。

　展開せよ、展開せよ、空の中から展開せよ。

　空の中から、《宇宙の理念》を展開せよ。悟りを得た者達よ。

　ここに述べた観音様の知見を、般若波羅密多そのものであられる仏陀が、これはご自身の悟りによる見解と完全に合致する、と語られ、これを承認したのである。

　これが般若心経である。　

【改訂版】の出版に当たって

　旧版では多くに方々からとても熱い反応を頂いて、著者としては喜ばしい限りである。

　般若心経編纂時の仏教の混乱状況は、そのまま現状の仏教にも言えることが次第に見えてきたが、旧版では仏教関係者ではない私が敢えてそこには踏み込まないようにしてきた。しかし読者の様々な質問や反応から、どうしても、そこに触れなければならないと思うようになった。旧版出版から僅か五ヶ月しか経っていないのだが、ここで改訂版を出すことにし、仏教界で問題になっている点なども追加し、特に重要視点として、実践を旨とする「修行の仏教」が如何に重要であるかについて、加筆した。

　これに関しては私自身が、分際を越えていることを認めつつ、敢えて分際を越えざるを得ない状況を選択し、そこに身を置くことにした。この私の選択が具体的に何であるかについては、読み進むにつれて理解して戴ける筈だ。

　この加筆部分と、暗号解読の要となる空を含む語句の再定義の証拠となる部分など、多少込み入った議論は枠付きとして分離した。そしてこの機会に、更に内容を充実する加筆をして、再び世に送り出すことにした。

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